らくとあいすの備忘録

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Amebientの音楽体験設計 (遷移編)

こんにちは。Amebient Advent Calendar 13日目の記事です。

もし、Amebientが何であるかがわからないという方は、先にVRChatで公開されているワールド と、phiさんの1日目の記事 を見て頂ければと思います。

今回は、Amebientの音楽体験設計 (遷移編)と題しまして、展開の切り替え部分にスポットを当てて書いていきたいと思います。今回は軽い記事です。決して時間が無くなったわけでは..。

世界とのInteraction

Amebientの特徴の一つに、行動・演奏の結果が 世界そのものに影響を与えてしまう というものがあります。 例えば、BGMを奏でるために初期配置された缶やフライパンを、外に運んでいって音楽を進めるとそれに伴って雲行きが怪しくなっていきます。 そして、いよいよ空が十分暗くなると、突風が吹き豪雨が降り、雷が落ちます。それを経て状況は次の展開へと遷移するわけです。

この遷移の瞬間に、今まで環境音として身をひそめていた雨風は音楽に参加してきます。 初回記事にも書いたように、Amebientは現実よりも少しだけ音楽的な世界です。 なので、音楽に世界がつられちゃってもいいよね、という気持ちでこのあたりは作っていきました。 ただし、どのぐらい明らかについてきちゃうかなどは結構な試行錯誤がありました。 今回はその試行錯誤の話を中心にしていきます。

試行錯誤

世界遷移のタイミングで、環境音が音楽に参加してくるという流れが固まった段階で一度遷移部分だけを、SonicPiを使って仮組みしてみました。 例えば、雷はglsl soundで作った爆発音のようなものを音程を変えながら何度か鳴らすことで主な部分は作られていますが、その音程やリズムのパラメータをSonicPi上で変えながら色んなバリエーションを作っていきます。 f:id:Raku_Phys:20201213220241p:plain その結果、第一版として次のようなが出来ていきました。

今のAmebientの雷と比べると大分リズミカルですね。 そして、この一つ目の雷を組み込んだ遷移サンプル音源は次のようなものになりました。

これをphiさんとcapさんに共有してみたところ、パっと聴きは感触良さそうだったんですが... f:id:Raku_Phys:20201213222332p:plain 少し話していくと、phiさんの理想形とは違っていることがわかってきたので... f:id:Raku_Phys:20201213222445p:plain 雷のリズムっぽさを消して、より自然っぽい感じに修正してみたわけですが...

たしかに、雷がリズムっぽすぎるという表面上の齟齬は無くなった音源なわけですが、(自分も納得して作ってない音源ですし)、どうやらもっと根本的なコンセプトで違うのだということが分かってきます。 f:id:Raku_Phys:20201213223226p:plain 最終的に言葉でうまくまとめられる概念になったかは際どいのですが、

  • 私:演奏者が世界の進行を能動的に引っ張っていく
  • phiさん:なんとなく音を鳴らしていたら、偶然世界がついてきた

という相違に帰着されるように思います。 さて、どう折り合いをつけていこう...と思ってこの日の数時間の議論は一旦終えたのですが...翌日言葉上のやりとりだけではなかなか折り合いを付けるのが難しい、と考えてくれたphiさんがSonicPiで作った音源を送り返してきてくれました。

いや...凄いですよね...。phiさんの視えているものが、音源からすぐに伝わってきましたし、言葉上かなり遠いように見えて、出音はかなり近いことが分かってきました。 音源上はかなりささいな違いだったんですね。(だから、言葉上の違いに気をとられて、大幅な修正をかけても折り合うわけはなかったんです...。)

最終的には、偶然にも聴こえるけれど実は音楽的に噛み合っていて世界/音楽を進行させる推進力となる遷移部分...のような言葉で表現するのは大変微妙ながら当時の自分としてはものすごく納得したコンセプトを持って次のような遷移部分となりました。

まとめと予告

今回の記事は、phiさんの1日目の記事に書かれていた、「衝突」を私の視点から書いてみる回になりました。 この議論は、Amebient制作期間の中で一番しんどくてかつ一番楽しいものだった気がします。 最終的な該当部分、15秒とかですけどね...長く続いていく曲の平坦な部分も大事ですが、遷移部分は短いからこそ重要とも言えるので時間をかけた価値はあったかなと思っています。 終末への移行部分もちょっと書きたかったですが...終末部分との関連が大きいので次回「終末編」で触れることにしようかと思います。決して時間が無くなったわけでは..。